008 Candle JUNE with Hitomi Kamanaka and Kana Yoshikawa




Candle JUNE(以下、J):自分は無駄じゃない時間を灯したくて、ろうそくという石油製品にこだわってやってきたんですが、同時にそこに、自分の終わりが見えてきたようにも感じているんですよね。いずれはやはり、地域や会社や、友達も含めた家族にとって、世界が持続可能であるように少しずつ自然にシフトをしていきたい。今は、時代的には自然だとは思ってるんですけど、作り過ぎている、自分の容量以上のことをしているという自覚があるんです。これからはたぶん、作る量も減っていくんじゃないかな。そうなってきた時に、ミツバチを育てたいですね。ようやく蜜蝋をつかってろうそくを作れるようになってきた時、たぶん自分が社会に対して石油でものを言うことをしなくなるでしょう。そういう自分の未来像に関しても、映画にいろいろなヒントというか答えをダイレクトにもらった気がしました。なんだか終わりが見えてきた気がして楽しい気分でもありますね。

鎌仲ひとみ(以下、K):きっと、そういう変化を促していく時期やプロセスがあるのよね。蜜蝋だって結構いっぱい取れるみたいよ?

J:でもミツバチはどこの地域でも本当に減ってきているみたいですね?

K:それは農薬のせいだと言われていますね。祝島はスウェーデンと同じように、島全体としても農薬はあまり使っていないんですよ。遡ると1999年に『ヒバクシャー世界の終わりに』を撮り、『六ヶ所村ラプソディー』を撮ってから、この映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を撮ったのですが、それまで環境を良くしようとするとお金が儲からない、お金を儲けようと思うと環境を破壊するというように、環境と経済がうまくマリッジできないジレンマがあったんです。時を経て、私がこの映画のためにスウェーデンで見たのは、それを乗り越えた姿だったんですよね。環境にいいことをしたらお金が儲かる、経済が回る、それはグローバルな投機のなかでお金儲けをバーチャルにするということとも違う。地域がより豊かになる方法がここにあった! という発見でしたね。たぶんそこに、どうしてもエネルギーが必要だったんでしょう。自然エネルギーが入ってくることで経済と自然が合体できて、恋人同士になれる。それは本当に私が映像を作りながらずっと求めてきたことだったんです。

J:今回の映画では、祝島の人たちのツラさ以上に、強さも際立っていたように感じましたね。そして逆に、電力会社や政治家の人からは弱さしか見えてこなかった。だからかな? これからどうすればいいのか考えたいと思ったんです。

K:太陽もある、森も海もある、温泉もある。私たちの豊かさは手に届くところにあるんです。あとは私たちの意志ですよね。原発だけに限定しないで、もっと再生可能エネルギーのこと、省エネのこと、石油をどうするかとかを、みんなに考えて頂きたい。そういうふうに話を広げるともっと映画に対しても共感できる部分が広がっていくのではないかと思います。

原発だけの内容を深めていくともっと狭い道に入っていくと思うのですが、今回の映画ではいろんなことをひとつの物語に入れています。祝島の行き詰まりは原発さえ除けば、日本中の村々や地域が直面している問題なんです。少子高齢化してどんどん人がいなくなり、畑が荒れていく。そこを見透かして開発がやってくる。そんなことは、あちらこちらで起きている。例えば、そういう地方の人がこの映画を見ると、祝島で起きていることは自分たちの地域で起きていることと同じだなと感じるんじゃないかな? でも、全地域へ向けてのマニュアルというか、普遍的にこれという方法はないんですよね。映画で紹介したスウェーデンでの取り組みに関しても、必ず全ての方法を日本に持ってきてやりなさいというものではないのよね。

私が大切だと思うのは、まず、自分たちの持っているものを発見するということ。それだけはね、自分で考えなくてはならないんです。そこに住んでいる地域の人たちが自分たちの山には何があって、この川の流れはこっちはゆるいけどこっちは速いとか、島のこっちは西風が吹くけどこっち側は東風が吹くとか、そういうのを一番知っているのは村の人たちなんだから。その人たちが本気で、明日何をするかを考えて欲しい。たぶんそれは絶対、外からこれをしたらとかではなく、そこに住んでいる人のなかから出てこなければ意味がないのよね。だから祝島なら、祝島のなかから出てこなくてはならないのかもしれない。自分たちのなかから出てきたことだから大事に出来るんです。今、スウェーデンで起きているのは、そういうことだと思うんですよね。

同じエネルギーにお金を払うのにも、外国の訳の分からない会社に払っているんじゃなくて、隣の○○屋さんに払ってるんだという感覚でエネルギーを買うってことが出来たら感覚が違うんだと思いますね。そういう小さなトライアルをいくつも私は映画のなかで描いたのですが、それを見てまず「あ、俺にも出来そう!」「俺たちだったら何ができるかな?」というふうに捕らえてもらえたら嬉しいです。



ミツバチの羽音と地球の回転
鎌仲ひとみ監督作品『ミツバチの羽音と地球の回転』は、2010年6月より全国順次上映スタート。2011年2月後半は、渋谷ユーロスペースで劇場公開。
上映スケジュール、自主上映会のお申し込み等、詳細はオフィシャルサイトへ。

http://888earth.net/


6paper

六ヶ所村核燃料再処理工場の問題を多くの人に知ってもらおうと、6peace・CandleJuneが鎌仲ひとみ監督監修で製作しているフリーペーパー。わかりやすい内容と手に取りやすいデザインの為、若い女性を中心に多くの人が手にとって既に1万4000部が全国に広がっている。今回更に増刷し、SHOPや個人・団体などの協力で再び全国へ広がってゆく。









[BACK]

Copyright(C)2001-2010, Candle JUNE All Rights Reserved.