008 Candle JUNE with Hitomi Kamanaka and Kana Yoshikawa




Candle JUNE(以下、J):自分がずっと新島でのイベントに携わらせてもらっているなかでの体験でもあるんですが、実際、島の方々の環境への意識が、自分たちより低い場合も多いですよね。例えば新島って波はいいし、サーフィンも出来るし、温泉もある。なのに、住民のゴミに関する意識が低かったりするんです。だからこそ、これはイベントを少しずつやってそういうところに意識が行けばと思った。新島もせっかく島なのだから、東京都からお金をもらって実験的な電力とか自給自足ができるようなシステムを実験してくれるような場所になってくれたらいいですよね。風なんかも強いし、風力発電もいいかもしれない。波力電力もね。

鎌仲ひとみ(以下、K): 東京都の環境局はすごく先進的で、結局六ヶ所村の風の電気を買うのにも東京都がすごく参加して、道を切り開いたんですよ。だから新島も何かできるんじゃないかしら?

J:新島もそうですが、自給自足の実験をやるとしてどこが一番あり得るのかを聞きたかったんですよね。どこかで総合的に始めていかないといけないのかなと思ったんです。

K:同時多発的に有り得るんじゃないですか? だって技術はあるし、人材も人もいる。やるということを決めれば動いていくはずなんだよね。でも、火力発電とか風力発電とかいうよりも、まずはバイオマス。まずは、燃えるものと燃えないものと区別すること。そして、燃えないものはバイオマスの施設が作れないのなら、何らかの形で再生することが一番お金のかからないやり方ですね。例えば、島出身者や村の人たちが島を再生するために少しのお金を出し合って作ったものが、事業としてすごく採算性のあるものであれば、そして株式投資で利益も配当されるっていうことになれば、どっちを取ってもいいことには違いない。大企業や行政が資金を出してくれないのであれば、地域の人たちが地域のなかでなんとかみんなに助けてもらってやる。それは可能だと思えるんですよね。

吉川香菜(以下、Y):資本の問題というのもあるんですね?

K:そうなのよね。儲からなければお金はそこにまわらない。で、儲かることが最優先という価値観が、儲かる方にばっかりお金が行くグローバル経済に世界を持って行ってしまった。そうして、儲けられる人というのは、より多くの資本を持っている人となり、お金は大資本家のところに吸い込まれていくようになった。でも、ふと考えてみると、石油をね、日本は20兆円も買っているんだけれども、その20兆円は誰のふところに入るのかというと、日本では一滴も石油が取れないから、それはすべて国の外に出て行って、戦争をしたりする資金にもなっている。だけど例えば青森は100%自然エネルギーで自立できる道がちゃんとあるのよね。そしてそれが現実的に50%できたとしたら、それまで石油に使っていた年間1,000億円が地域に落ちていくんですよ。要するに、お金を出し合って風力発電を建てた人たちにそのお金が還ってくる。風力発電、水力発電、バイオマス発電することが地域にいる自分たちの資本になり、お金も仕事も生み出すし、環境を破壊せずに暮らしていくことにもつながる。それがすごくシンプルに分かればみんなそれを支持するのではないでしょうか? 祝島の例では、原発で作ったお金は全部中国電力が広島にかっさらっていくわけでしょ? で、海外から石油やウランを買うために使うんです。でも、映画で紹介したスウェーデンの例のように、風力発電が1回まわると50円が地元の足元に落ちるということが分かれば、それはすごく革命的なことだと思いませんか?

J:そこにもう一歩、近づくきっかけがあればいいですね。

K:日本に意外と足りないのはコーディネーションの力なのよね。生ゴミからバイオマスガスを作る技術もあるのだけれど、そういうプロジェクトを推進するコーディネート力がない。だから、地域のなかにある可能性を明示して、これだけみんなでお金を出し合ってやればこれだけの資本が産まれるということが分からずにいる。映画のなかに出てきた飯田さんのように、人と人を繋いだり、技術と技術を繋いだりするアドバイザーが足りないのよね。原発だって祝島の人達に何の相談もしないで建てようとしたのがそもそもの間違いで、勝手にやれば原発だけではなく風力発電だって問題。どんなことでも、地域の人の了承、どんなメリットがあるのかということが分からなかったら、受け入れられないよね。それにはどういうプレゼンテーションをしてあげられるかってことだと思うんだよね。

J:街全体を全く新しいものにしましょうというよりは、どちらかというと昔からシステムとしてある古い下水を利用するようなプレゼンテーションがあれば、昔の人も反対はしないように思います。

K:それもありますね。かつて無駄にしていたものを「もったいないから循環させる」という考えの元に技術を使う。そういう人がひとりでもいるといいのかな? だって、映画のなかに出てきたスウェーデンのおじさんなんて、仲間が森で木を切っているのを見て「おい、おれたちずっとこれをゴミにしてきたけれど何かに使えるんじゃない?」ってインターネットで調べて、温水を循環させる暖房装置を作ったのよ。地域暖房施設を作る材料は全部インターネットで買って、施設自体は建設会社のおじさんのノウハウで。そうしたらちょうど市が、村の地域暖房施設が老朽化していたので立て直す計画の予算を全部くれたんだって。

J:それが日本の雪国だった場合には、除雪の効果だってありそうですよね?

K:そうよね。温泉旅館が自分たちの暖房を石油でやったりしているのは、ナンセンスで本当におバカさんだなと思う。だって、とうとうと流れて捨てて温水の熱をパイプで還流させるだけでもう石油フリーでしょ。最初のインフラは大変かもしれないけど半永久的になくならないエネルギーとタッグできるんだから。

J:映画のスウェーデンのシーンにもありましたけど、「じゃあ、どうする?」っていう会議をしていても始まらないのかもしれませんね。「これは誰がやる」「俺は何をする」「明日までにここまでやる」と、そろそろ具体的に決めていかないといけないのかも?

K: 5人のパッショネイト(パッションがある熱い人間)がいれば、着実に地域は変えられるとスウェーデンの人は言うのよ。

J:ひとつの会社においても、「毎日大変だ」と言うだけのメンバーが半分以上になると「明日からどうしよう?」というふうに迷ってしまう。でも、「選択してここに来たのにそんなこと言っていたら1日が損!」と言う人がひとりでも出てくると、その気分が伝わって途端にパワーバランスが変わる。会社も地域も、全部そういうところがありますしね。

K:そういうふうにして誰かが実際にやり始めると、成果が見えてくるから、仕事も楽しくなるよね。それが、スウェーデンがうまくまわっている理由なのよ。








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