008 Candle JUNE with Hitomi Kamanaka and Kana Yoshikawa




鎌仲ひとみ(以下、K): 映画『ミツバチの羽音と地球の回転』はどうでした?

吉川香菜(以下、Y):祝島の人たちは仕事として原発反対の運動をしている訳ではなくて、生活をかけてやっている。その思いが、ダイレクトに強く伝わってきました。映画のなかで原発を建てる側の中国電力の人たちも、それに反対している祝島の人たちも共に「未来のことを考えている」と言っていたけれど、私は祝島の人たちの言葉の方に真実味を見たというか、心が動きましたね。

Candle JUNE(以下、J):中国電力の人に「魚は食べないんですか?」「野菜はどこの野菜を食べてるんですか?」ということを聞いてみたいですよね。

K: 映画では中国電力さんがどんな生活をしているかは描いていませんが、魚はね、阻止行動のなかで「原発のすぐそばで獲れた魚でも自分たちは食べる」というふうに言っていましたよ。そこに行っちゃうとハマっちゃうんですが・・・。確かに放射性物質は微量には出ているけれども、それが本当に人間の体にとって悪影響なのかは長い時間かからないと分からないことでもありますから。でも、例えば、島根原発の周辺では原発ができる前は100軒もあった島根原産の名物ワカメの店が、今は10軒しかないとかね。それは原発のせいで海水温が上がってワカメが溶けて出来なくなってしまったからなんですけど、祝島の人と中国電力の人との間にも、そういうやりとりは延々とあるのよね。だって50日間も原発に反対する阻止行動をやっていたんだから。

Y:50日はすごいと思いました。そこまでエネルギーを使うなんて。映画のなかで、中国電力の人の「本当は阻止行動をやめたいと思ってる人がいるんでしょう?」と言った言葉に「そんな気持ちの人がいたらここには来ていない!」と祝島の人も返していましたね。

K:そんな気持ちなら、27年間も28年間も続かないですよ。一緒に阻止行動を追っていた私もヘロヘロでした。だってみんな毎朝3時とか4時に起きてお弁当を作って、朝6時くらいの船で現場に行くのよ。それで中国電力が「今日は帰ります」と言う夕方4時5時までそこにいる。そうすると家に着くのが夕方の6時くらいでしょ? 日々の仕事ができるのはそれから翌日の朝4時まで。70〜80歳のおじいちゃんやおばあちゃんたちが、自分の家のことも畑のこともできず、漁にも行けず、大変な日々だったと思う。どうしてそんなにがんばり続けることができるのかは単純で「目の前のここで生きているんだから、ここを汚されたくない」という、すごくシンプルな思いなのよね。

J:島や集落がもっとあったら、少し違ったかもしれないとも思いますね。今は近い場所でのいがみ合いみたいになっちゃっているから・・・。

K:そうなのよね。今、祝島では9割が原発に反対しているのに、島の外では反対しているのは少数派です。「原発がくれば町の経済が活性化するからいいんじゃない?」と多くの住民が思っている。原発そのものには関心を持っていない。それが大変なんだよね。そもそも、中国電力が平等に情報を開示して相談する民主的な方法でなく、先にお金をばら撒くような汚いやり方を取ったことで、人間関係も壊れてしまった。なかなか元には戻らないよね。

J:今現在、関連する裁判などは行われているんですか?

K:いくつかあります。まずは阻止行動の間に中国電力がコンクリートの塊を海に放り込み始めたのを祝島の人の活動を支援しているシーカヤックの人と祝島の人が止めようとして、ひとりのシーカヤッカーが船の上に上げられて首を絞められ、救急車で運ばれて入院することになった件で。彼が傷害事件として刑事訴訟を起こし、反対に中国電力が島の人2人、シーカヤッカー2人が妨害をしたと4,300万円の損害賠償をしている。もうひとつは、祝島の人たちが1日工事を止めたら、940万円の賠償金を求めるという訴訟を中国電力が起こし、最終的に500万円で中国電力側が勝ってしまった件。これはまだ損害賠償を求められてはいないけれども。他に、祝島の人と田ノ浦の人の共有地を原発建設の敷地として勝手に売却した件での裁判も継続している。結構いくつも裁判はありますよ。でも、映画でも取り上げた町議会で埋め立て認可が出てしまったのは大きかったですね。

Y:島の人達はその町議会を傍聴できなかったんですよね?

K:はい。しかも議事録も公開されていないんですよ。

Y:そんなことってあるんですか? 

K:上関町には当時、情報公開条例がなかったんです。今は作り始めているのかな? 実は、日本中でも9つの市町村しか情報公開条例を持ってないところはなく、それも住人が200〜300人ほどの小さな島がほとんどで、3,300もの人口のある町で情報公開条例を持ってないのは珍しいことでした。








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